学生主体の伝統を守り、次の100年へ踏み出す〜蹴球部100周年記念行事を開催〜

京都大学蹴球部は2024年12月14、15日に創部100周年記念行事を開催した。現役とOB204人に加え、来賓を招き盛大に執り行った。

記念式典は14日、京都大学の時計台記念館大ホールで行った。物故者への黙とうの後、永井利明OBクラブ会長が挨拶。「蹴球部100年を振り返ると3つの時代に分けることができる。まず戦前は、3連覇を含む関西学生リーグ優勝7回を誇る栄光の時代。次に戦後から1980年ごろまでの1部、2部の時代。そして1990年には10年ぶりに1部復帰を果たしている。しかしその後は2部、3部の時代となった。競技人口の増大に伴い私立大学にかなわなくなっている。この環境のなかでどのような目標を持っていくのか難しい状況である。ただ学生が主体となり、自分たちで考えて運営してきた伝統があり、これが蹴球部100年たる所以である。将来を担う現役の皆さんに期待を込め、新たな100年の一歩を踏み出す機会にしたい」と述べた。

永井利明OBクラブ会長

続いて来賓からの祝辞を頂いた。宮川恒京都大学副学長は「蹴球部は学生が主体となってプランを作り、与えられるのではなく自分たちで学ぶことを重んじている。まさに大学の理念と一致している。スキルと体力、知力の限りを尽くし難敵に挑むことこそ問題解決力を育むことにつながる。蹴球部がこれからも発展し、優れた人材を世の中に輩出することを期待する」と挨拶した。

宮川恒京都大学副学長

山本昌邦日本サッカー協会ナショナルチームダイレクターは「振り返ると複数の京大出身者が日本代表チームを引っ張った時代があった。先輩の活躍があって日本代表もW杯の頂点を目指すことができる。挑戦があってこそ今の日本代表があるわけで、感謝しかない」としたうえで、「代表の分析を担うテクニカルスタッフを充実したい。いま東大と筑波大にお願いしているが、京大も加わりW杯の頂点をともに目指したい」と提案をいただいた。

山本昌邦日本サッカー協会ナショナルチームダイレクター

来賓祝辞の最後は武田厚東大LB会理事長が登壇。「東大ア式蹴球部とLB会を代表してお祝いを申し上げる。両校蹴球部の関わりは100年前の1924年4月に東大の京都遠征から始まった。2-1で京大が勝ったことが、京大における蹴球部創設につながった経緯がある。定期戦が始まって75年になる両校だが、現役だけでなくOB同志のつながりも長く深いものがある。100年は単なる区切りで、次の100年が問われる。自分たちの存在感をどう示すのか、力強い一歩を踏み出してほしい」と祝いの言葉を述べた。続いて来賓14人(山本昌邦氏、武田厚氏を除く)の方々を紹介した。

武田厚東大LB会理事長

式典の最後は現役を代表して25年度の木本晴仁主将が挨拶した。「OBクラブから活動支援を頂いていることを感謝する。現役は100年間積み上げられたものの上で活動している。先輩が築き上げてきた伝統を感じることも多い。最たるものが学生主体である。時に難しさを感じつつも、やりがいと楽しさを持ち活動できる。学生主体の伝統を体現し、かつ次の世代に伝えなくてはならない。未来に向けて現役ができるのは、ピッチ内外の活動に向き合い続け、真剣に行動することだ。学生主体のもと、真剣に部活と向き合えば良い組織になると信じている」と次の100年に向けての決意を述べて締めくくった。

木本晴仁 25年度主将

パネルディスカッションを開催〜自分で考え、実行する〜

記念式典に先立ち時計台記念館大ホールで「Look Forward」と題し、現役、OB代表によるパネルディスカッションを開いた。パネリストは以下の通り:寺井哲治氏(ファシリテーター、S54卒)、佐藤博樹氏(OBクラブ代表幹事、S51卒)、中尾佳亮氏(H10卒)、日永裕哉氏(H30卒)、現役から日置晃久氏(24年度主将)、板橋真悠子氏(同GM)

まず司会の瀧下靖春氏(S60卒)が企画の目的を説明した。「京大らしいワイワイ議論する場を設けたかった。京大らしさとは良い意味フラット、言いたいことを言える環境だ。この場も自由に発言して現役とOBの世代を超えたつながりを示せたらと思う」と述べた。続いて宮下正弘蹴球部長(H5卒)が現状を説明した後、議論に移った。

瀧下靖春氏(S60卒)
佐藤博樹氏(OBクラブ代表幹事、S51卒)

寺井氏からの「なぜ京大蹴球部を選んだのか」という問いに中尾氏は「より高いレベルでやりたかった。シニアでプレーしているが、今もうまくなりたい気持ちがある」。日永氏は「入部したらレベルが高く挫折しそうになったが、成長できる環境だった」と答えた。板橋氏は「高校はダンス部で体を動かしていた。大学で熱中できるものを探したがコロナで色々な活動が自粛していた。その中で京大サッカー部を見つけ、自分でやらなくても熱中できるものを見つけた」という。佐藤氏からはOBクラブの現状について説明があった。「24年11月で642人が加盟しており会費を通じて現役を支援しているので、今後も協力をお願いしたい」と述べた。

寺井哲治氏(S54卒)
中尾佳亮氏(H10卒)
板橋真悠子氏(24年度GM)

寺井氏からの「京大蹴球部の強みとは何か」について日永氏は「自分で考えること、集中できることではないか。社会に出ても役に立つ」と指摘。中尾氏からも「格上の相手にどうすれば勝てるか、緊張感があった。リーグ戦では相手に技術を出させない、気持ちよくプレーさせないよう心掛けた」と当時を振り返った。日置氏は「主将になって部員やコーチと話し合い方針を決めた。主体性は勝手に付くわけではなく。目標を実現するための思考力が身についた」。板橋氏はGMとして「どうしたら地域に愛され、勝つチームになるかずっと考えていた。技術では超えられなくても粘り強く続けることが大事」と、考える続け実行に移すことの大切さを訴えた。

日永裕哉氏(H30卒)

聴衆席からも活発に意見が出た。木本晴仁25年度主将は「皆考えることが好きで学生主導は楽しい。コーチに全て委ねるのではなく、学生主導は即ち自分たちに責任が来るということ」と述べた。留岡寛氏(S39卒)は現役時代を振り返り「4バックに変更して初めて関学に勝った。コーチとけんかしつつも、新しい方向を出していくのが京大らしさ」と指摘した。

留岡寛氏(S39卒)

続いて「蹴球部として続けるべきこと。これから始めたら良いこと」に議論が移った。日置氏は「学生主導、自分で考え実行することは続けていくべきだ。ミーティングを多くとり、学年間のコミュニケーションが大事だ」と語った。佐藤氏からは「体育会なので、チーム一丸となって勝利を追求すべきだ。またサッカー仲間の輪が広がるのでぜひ引退後もプレーを続けてほしい」と述べた。中尾氏は「分析分野はもっと強化できるのでは。プレーしなくても分析に興味ある人を探してはどうか」との意見が出た。これに対し現役からアナライズ班があり、試合中のパス成功率や相手チームの事前分析を行っている現状を説明。今後はGPSや心肺機能など個々の選手のデータ充実させたい意向が出た。

日置晃久氏(24年度主将)

最後に司会の瀧下氏が「OBは現役を支え続ける。卒業したらOBとして現役の支援を始めて、世代の橋渡し役となることを期待する」と全体の議論を総括して終了した。

祝賀会を開催〜吉田に響く「GO KIU」〜

14日の最後のイベントとして時計台記念館2階国際交流ホールで祝賀会を開催した。思い思いのテーブルに移り、また席を移動して旧交を温めた。途中、山本昌邦日本サッカー協会ダイレクターから日本代表のサイン入りユニホームが贈呈されるなど、2時間の宴は瞬く間に過ぎた。

締めは伝統の京大蹴球部の部歌斉唱。松本金浩氏(H11卒)のエールのもと、221人が肩を組み高らかに部歌を歌う。吉田の空に「GO KIU」がこだまして、お開きとなった。

京大蹴球部の部歌斉唱

農Gで記念試合〜世代を超え、往年の技を披露〜

15日午前に農学部グランドに集まり創部100周年記念試合を開いた。快晴ではあるが厳しい底冷えとなる、冬の京都らしい気候となった。試合の前に集合写真を撮影。山頂部がうっすらと雪化粧を見せた比叡山をバックに121人がレンズに収まった。その後は年代別チームに分かれ紅白戦を実施。現役時代を彷彿とさせるプレーの数々が披露され、2日間の記念イベントを終了した。

集合写真

筆者:
100周年誌 編集委員
S59卒 小村